口臭に関して(4)
- 2015年4月号 -
引き続いて、口臭に関して説明していきます。
今月は、真性口臭に関して、その原因と対策を説明していきます。
3 真性口臭
真性口臭の大部分は、前述したとおり実は口腔内に原因があります。
当院は歯科医院という事もあり、口腔内に関してのみの記載とさせてもらいます。
人の口の中には、およそ100種類以上の細菌が常にいます。よって、菌がいること自体は何ら問題はありません。ただし、歯周病や虫歯などの条件下では、微好気性細菌や嫌気性細菌が過剰に増殖し、それらの分解産物・代謝産物として、口臭の原因となる揮発性ガスが産成されます。
①歯および歯肉に関するもの
1歯周病
プラークや歯石内部には、1gあたり10~100億の歯周病菌が存在します。歯肉炎・歯周病患者の歯肉は慢性の炎症が起きており、その炎症による産物が分解され口臭の原因となります。
2虫歯
虫歯によって、プラークや食べかすの付着や停滞が起こりやすくなります。これは、虫歯を進行させるだけでなく、食べかすは発酵し分解され口臭の原因となります。
3歯並び
歯並びの乱れにより口腔清掃は難しくなり、プラークや食べかすの付着や停滞が起こります。また、ある種の歯並びでは、口を閉じずらい状態が持続することにより、口腔内の乾燥がおこり、口臭の原因となります。
その他
その他、親知らずが半分でた状態であったり、アマルガムという以前の虫歯の治療で使われていた金属なども口臭の原因となります。
②唾液に関するもの
生理的口臭の所でも述べましたが、唾液の分泌が不足すると口臭は発生しやすくなります。ここでの唾液の分泌量の低下というのは、生理的なものではなく、基礎疾患や服用されている薬など何らかの理由により唾液の分泌量が低下してしまったものをさします。
③舌や粘膜に関するもの
舌の表面に付着する過剰な舌苔は、舌粘膜の新陳代謝による細胞や食べ残し、口腔内細菌が付着する本体であるため、口臭の原因となります。
また、粘膜の病変(代表的なものとしては口内炎など)は、痛みなどによってブラッシングが十分にできず、細菌の増殖を促進する可能性があります。
それでは、原因別に対策を考えてみます。
①の歯及び歯肉に関するものに関しては、歯科的な治療を行う必要があると思います。治療によって、その原因が取り除かれれば、口臭の改善は見込めると考えます。
②の唾液に関するものに関しては、通常の歯科治療での改善は難しいと考えます。
年をとると、他の部位同様に唾液腺の分泌機能も衰えていくため、唾液の分泌量が低下します。また、女性の場合は、閉経後にホルモン等の関係で唾液の分泌量の低下が起こりやすくなります。これらに関しては、ある意味、生理的な要素があります。
また、炎症や腫瘍を含む唾液腺の病気、唾液の分泌に関与する全身疾患の影響、治療のために唾液腺付近に放射線治療を受けた方でも唾液量は減少します。さらに、内科や耳鼻科等、他科の病気で薬を服用されている場合、その薬が唾液の分泌に対して抑制的に働く場合もあります。
上記のような理由により、このケースに関しては歯科の治療による改善が難しくなります。
では、どうするか。
対策としては、唾液を出しやすい環境に持っていくことが一番だと考えます。
まずは、生理的な口臭の部分にも記述しましたが、唾液の元となる水分量を増やしてあげることが大切だと考えます。
そして、次に唾液が出やすいようにしてあげてはどうでしょうか。
以下は、口臭治療の名医、本田俊一先生の著書「口臭治療の実践」から抜粋させていただきました
自律的唾液分泌機能促進術と舌機能促進訓練法
理論 ある種の唾液分泌は、舌の動きと連動しています。この働きを意識下で 能動的に行ない、唾液を自律的にコントロールする事がこの訓練法の仕組みです。 舌の動きも基本的には無意識下の神経支配(自律神経支配)を受けているのですが、同時に自分の意識で舌を動かす事も可能です(運動神経)。 自分の舌を使って能動的に新鮮な唾液を出しつづける事が、この訓練法の仕組みです。新鮮で美しい、活性の高い唾液が、常に一定量舌表面を流れる状態を作り 出し、口腔内の自浄性を高め、そして口臭の元となる口腔内からのガス揮発を抑制します。 同時に、舌の洗浄を行なって舌苔を除去し、過剰な舌苔の発生を防ぎます。 意識してこの訓練を重ねる事により、無意識のうちに口呼吸が出来なくなくなり、自動的に鼻呼吸に転換できます。少なくとも訓練中は口呼吸が出来ません。 実践方法 口は、完全に閉じないでください。自然態にする事。 1 舌の先(舌尖)で左下の一番奥の歯に触れるようにします。この時、舌は左に大きくねじれています。 2 1の状態から舌の先で、左下奥の歯から時計回りに下の歯の内側を左奥歯→前歯→右下奥歯の順にゆっくりとなぞっていきます。 (舌は、左に大きくねじれていた状態から、右側に回転しながら右側にねじれた状態で終わります。) 3 右下の一番奥に触れている舌の先をそのまま持ち上げ、右上の一番奥の歯に触れます。 4 右上の一番奥から今度は、歯に接することなく、口の中の天井部分の、最も高いところを舌先で触れるように左上奥歯までなぞって行きます。(この時、舌は 右にねじれた状態から、上向きに大きく回転しながら、左側にねじれた状態で停止します。) 舌を、右上の一番奥の歯から、左の一番奥の歯に口の中の天井づたいに弓なりに移動させることになります。 5 左上奥歯から、今度は、上の歯の内側を左上奥歯→前歯部→右上奥歯の順に触れていきます。(左にねじれた舌は、上の歯の裏側を這うように右に回転します。) 6 右上奥歯から、そのまま舌の先をまっすぐ下に移動します。右下奥歯の根っこの付け根(歯茎部分)あたりの深いところにおきます。 7 右下奥歯の根っこあたりに舌先を強く押し当て、今度は力強く右下奥歯→前歯→左下奥歯の、それぞれの根っこの先付近(歯茎部分)をなぞっていきます。 この時、舌下小帯(舌とくっついている帯上の粘膜)のつけねにある二つの舌下小丘をなぜる事が重要です。 右下にねじれた舌は、下顎の歯列弓にそって、反時計回りに左側に回転し、この運きをスタートした、元の位置に戻ります。 8 1~7の順に数 回繰り返します。口腔内乾燥を起こしている患者さんは、この最初の唾液を出す事が初めは困難ですが、頑張ってください。 唾液が出たら、すぐに飲み込まずに、貯めてください。 もっと、出にくい場合や、この作業を手っ取り早くする場合は、口腔内をやや吸引する感じで、陰圧にしてみてください。 9 ある程度唾液がたまると、口腔内を陰圧にしながら舌の上に唾液を乗せます。 10 舌を、でっかいチューイングガムと想像してください。 舌を口の中の天井に押しつけて、ゴシゴシします。 出きる限り色々な角度からゴシゴシして、舌を天井にこすり付けながら、表面の汚れを取ってください。 11 次に、舌の掃除を中断して、たまった唾液の半分を飲みこんでください。 この時、舌の掃除をした後の唾液が、味がついていたり、臭いがするようであれば、それが無くなるまで数回 1 から 4 のステップを繰り返します。 12 舌の掃除が終了したら(この段階では、舌の上に唾液が残っています。全部唾液を飲み干さない事が大切です。)再び 1 から 3 までのステップを行な い、舌の上に唾液を貯留します。会話する時はこの状態を作り出してから会話してください。 少しずつ、唾液を飲みます。 唾液が減少してくるたびに、間隔を置いて舌先の「らららら・・・」の運動もしくは「がらがらがら・・・」の運動を繰り返し、常に口腔内に新鮮な唾液が出る ようにします。 一度、唾液がたまっていると、これは容易に出来ます。 この訓練を継続して行なっていくうちに、自然 にこの運動を、簡略化したり、自分なりのバリエーションを加えたりしながら、それぞれの方に独自の、やりやすい方法が身につきます。 また会話のあいだにも、ちょっとした、口腔内の舌の動きで唾液を出しつづける事が出きるようになり、以前のような、口腔内の乾燥感や口臭は減少します。 |
専門書からの抜粋なので、少し難しい部分はあるかもしれません。
試しに書いてある通りにやると、かなりの唾液が出てくることを感じました。
書いてある通り、簡略化しても十分な唾液の分泌量になると思います。
④の舌や粘膜に関するものに関しては、比較的、単純です。
口内炎等の粘膜疾患に関しては、当たり前ですが、それを治すことが一番です。また、粘膜疾患は比較的、ビタミンBが不足するとできやすくなります。頻繁に口内炎ができる方
は、サプリメントを利用しても良いかもしれません。
舌に関しては、注意が必要です。
過剰な舌苔は口臭の原因になります。
しかし、同時に過剰に清掃した舌も口臭の原因になります。(理由は後述)よって、個人的には2~3日に一回ぐらいのペースで、歯磨き後に舌の上を数回、軽く奥か
ら手前に歯ブラシでなぜてあげる程度でいいのではと感じています。
それぐらいの清掃で、過剰な舌苔といった状態にはまずなりませんから。
舌磨きを勧めない訳に関しては、最後の補足で説明いたします。
今回はここまでとなります。次回はまとめになります。