トピックス一覧 topics

最新歯科治療の信憑性

- 2014年5月号 -

歯科の分野では、あらゆる器材や治療法が最新のものとして出てきては淘汰され、実際の臨床に耐えうることができる方法がずっと残っていきます。

 

以前、テレビなどの報道で最新の治療法と紹介されていた、ある方法も今ではすっかり聞かなくなりました。

既に、最新ではなくなったから聞かなくなったのでしょうか?

おそらく様々な部分で問題が起き、行う先生が減ったといのが現状ではないでしょうか。

 

一時期、様々な問題が報道されたインプラントでさえ、臨床応用から30年以上経過した実績があるものなのです。その治療成果があるから、これだけ広く行われているのです。

そして、一部、価格競争のような形になり、薄利多売のような医院が出てきて、さまざまな問題が出てきているようですが。

 

さて、話に戻ります。

具体的な治療名は避けるとして、つい2~3年ぐらい前には、比較的テレビ等で紹介されていた方法です。

この方法、10年ぐらい前もその原点と呼ばれるような治療法があったのですが、様々な問題がおき衰退し、3~4年前に新たな形で現れ、広まりました。

しかし、この方法を虫歯の治療として使う場合、そこには大きな矛盾が存在するのです。

 

その矛盾とは、厳密な封鎖というところにあります。

虫歯のでき方は、ご存知でしょうか?

簡単に説明すると、糖を虫歯菌が取り込み、酸を作り、その酸が歯を溶かしていくという構造になります。

学生時代、この流れを見て、疑問に思ったことがあります。

では、仮に虫歯を残し、周囲をセメントで封鎖して、糖が入ってこない環境が作れれば、虫歯が残っていても、進行したり、悪さをしないってことだろうか?

この疑問は、歯科医になった後、ある講師の先生により解決してもらいました。

「実際、虫歯を残してセメントで2重に封鎖した歯の80%近くに虫歯の進行を認めなかったという論文があるんだと。ただし、残りの20%が、表面からも見えないので、内部で進行しひどい状態になったので、この方法は一般的に受け入れられない」と。

つまり、完全に封鎖でき、虫歯菌への糖の供給が断たれれば、虫歯が残っていても進行しないということです。

 

さて、これを踏まえて、以前、話題になった治療法を見てみます。

その方法は、虫歯の周囲を削り、薬を置いて封鎖するという方法でした。内部の虫歯菌は、置いた薬が退治してくれると。

テレビ等では、歯を削らない虫歯の治療として紹介されていました。(ただ、実際はセメントで封鎖するため、少なくともくっつける部分は削らなければならないのですが)

 

その研修で言われたことは「薬が十分に効くように、外部と遮断する必要があります。完全に封鎖しないとこの方法はうまくいきません」と。

「完全な封鎖?」

先ほど述べたように、完全な封鎖ができれば、薬を置かなくても虫歯の進行を抑制できるわけです。しかし、この完全な封鎖というのが難しい。対象は口腔内の菌ですから、目で見て埋まっているというレベルではないわけです。

そして、歯ですから咬む力が何千回、何万回と加わった時に、接着面がはがれてしまう可能性があるわけです。

ましてや虫歯を残し、接着面積が限られた状態では、かなり厳しいと言わざるを得ません。

 

論理的に考えれば、上記のようになるのですが、どうなんでしょう。

以前はHPにまで載せていた医院が、あまり載せなくなっていることを考えると、やはり結果がついてこなかったのではないでしょうか?

様々な方法・術式が紹介され、そして淘汰されていきます。

私たち歯科医もそれらを十分に吟味して、行わなければとつくづく感じます。

  • インプラント・審美歯科・矯正歯科 Q&A