尊敬する人
- 2013年6月号 -
近い世代(というか私より1つ若い)で私が尊敬している人がいます。
「徳永遊心」という方です。
陶芸家?陶工?どの言葉がしっくり合うのか私にはわかりませんが、同年代、しかも女性でこれほど尊敬できるという人は珍しいというのが本音です。
こんな風に書くと「この男尊女卑の豚野郎!」と言われそうですが、まぁ、実際に徳永さんには、はるか昔にこの言葉を言われたわけですが・・・。
昔気質の父に育てられたため、どうしても女性は男性が守るべきものという考えが深いところにあるようで、そんな私にこのありがたい言葉を送っていただいたわけです。
以前、三越の日本橋本店で彼女の個展があるとDMをもらいましたので、久々に会いにいかしていただきました。
開業時に、たいそう立派な名刺受けやコーヒーカップなどをいただいたお礼もかねてですが。
久々に見た彼女は、太っていました・・・。
失礼、生き生きと働いていました。
彼女に作品は、どことなく温かみを感じさせ、かしこまったものではなく、日常の生活で、例えば少し料理が上手にできたときに、また、友人が遊びに来た時に、また、何かいいことがあった日に、気兼ねなく、使えるような、彼女の人柄を表現しているような作品です。
文才のない私ではうまく表現ができないので、興味がある方は、ネットで検索して作品を見ていただけると私の言いたいことが伝わると思います。
彼女の仕事に対する姿勢はすさまじく、私が知っているだけでも過去に何度も過労で倒れています。私の同業者も含めて、私が知っている限り、最も仕事に費やす時間が多い方ではないでしょうか。私も週1休みで、仕事に対する比率はかなり高いと考えていますが、彼女と比べると恥ずかしくなるばかりです。
また、恥ずかしながら私が読む本といえば専門雑誌などがほとんどです。本来ならもっと様々な本も読むべきですが。
一方で、彼女のような芸術系の仕事は、同様に専門性が高いと思うのですが、あらゆる感性から刺激を受ける必要があるらしく、様々な分野に精通しています。
いろいろなところに出かけ、様々なものに触れ、出会い、感じ、それを彼女の作品に取り入れていくようです。
以前、私が学生時代から行きたくて、でもまだ実現していない「エジプトに行ってピラミットを見る」という子供のような夢を知っていた彼女は、これ見よがしにエジプトに行った時にわざわざ現地からハガキを送ってくれました。
社会人になってから知った言葉で、その後、私の座右の銘になった言葉があります。
「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ。ただ一燈を頼め」
江戸時代の儒教学者、佐藤一斎の言葉です。
私には、彼女がこの言葉のとおり、一燈を見つめ、それを信じて突き進んでいるように見えるのです。
幸い同世代ということもあり、尊敬の念だけではなく、こっそりとライバル視している存在でもあります。自分の気持ちに甘えが出たときに、彼女を思い浮かべ、たぶん彼女なら妥協しないだろうと、自分を叱咤しています。
多くの雑誌に載ったり、個展をひらいたりと彼女にはずいぶん差をつけられてしまったなと考えながらも、自分の道で、いつか追いつけれるよう頑張っていきたいと思います。