口臭に関して(6)
- 2015年6月号 -
本文に入れると長くなってしまうため、補足だけ別に記載することにしました。
長かったですが、これで口臭に関しては最後となります。
補足①
舌磨きを勧めない訳
前述したように、過剰な舌苔は口臭の原因になります。
しかし、私はあまり舌磨きを勧めません。口臭を気にされてる患者さんの舌は、どちらかというときれいな方が多いからです。
では、舌苔とはそもそも何でしょうか?
舌の表面に見える白~褐色の苔状のもので、舌の奥の方まで均一の存在します。体調などにより量や色が変化することがあります。
実は舌苔は、歯垢(プラーク)とほぼ同じ構成でできています。舌の表面は、実はざらざらとした微細な乳頭で覆われており、その間に食べかすや口腔内の細菌やカビ、剥離した上皮、白血球やリンパ球などが停滞・定着して舌苔となります。
ただし、通常の付着量では舌苔が口臭の原因にはなりません。(無論、舌苔が厚くなってしまったりかなりの量になると、違和感や味覚異常が出たり、口臭の原因になったりします)
適度な量の舌苔は、水分の保持と健全な菌叢を作り、新陳代謝していく新しい細胞を保護してくれます。
上記で述べたように、口臭を気にされている方で舌磨きの習慣がある方は、舌がきれいすぎるのです。過度の舌磨きにより舌表面粘膜が荒れ、過敏になり、適度な水分保持が出来なくなった舌は、口腔乾燥や口臭を生じる原因になりかねません。
さらに唾液はいつも舌磨きによって破壊された舌表面粘膜の剥離細胞が浮遊するようになって常に白濁し、ひどい人は沈殿まで起こしている人が多く独特の臭気を持つようになります。(口臭治療の実践より引用)
舌苔もある程度は、必要なものと私は考えます。
例えば、今、舌磨きの習慣があり、特に問題を感じていない方はそのまま行っていただいていいと思います。
問題なのは、口臭を気にして新たに舌磨きを始めた方の場合は、やりすぎて舌の粘膜自体を傷つけてしまう可能性があるため、基本的にはお勧めしていません。
補足②
一般の口臭抑制商品に関して
よくテレビなどで、口臭抑制のスプレーやガムなどを目にします。
特定の商品に関してコメントすると問題がありそうなので、全般の話として記載させていただきます。
1 マスク効果や清涼感によるもの
口臭そのものに対する効果ではなく、商品の香りによって口臭を隠し(マスク効果)てしまう方法。また、清涼感を与え、口腔内の不快を緩和させるもの。
この方法は、口臭そのものを対象としたものではなく、商品に含まれる香りと口臭を拮抗させ、覆い隠すもので、口臭の治療にはなりません。そのため、作用時間が短時間となります。
ただし、口腔内の不快感が緩和されたり、芳香によりリラックスできるのであれば、その効果は多少はあるのかもしれません。
2 多少の抗菌性を加えたもの
1 のマスク効果や清涼感のほかに、ポリフェノール類を加え多少の抗菌効果を加えたもの。
抗菌作用が強いわけではありませんので、主な効果は 1 の効果となり、1 とあまり変わらないと考えます。
3 市販の洗口液
多少の抗菌作用は含まれるものの、口臭を改善するほどの効果はないと考えます。特に、アルコールが配合されたものでは、口腔乾燥を増悪させる可能性があるため、注意が必要と考えます。
4 ガムやアメやタブレットなど
咬んだり舐めたりすることによる生理的な効果により口臭を抑制するタイプで、1 のように芳香などがついているタイプが多い。口腔内に入れている限りは、有効だと思います。
しかし、ガムをずっと咬んでいるわけにもいかず、また、使用後に口腔乾燥を起こす可能性があります。
5 医薬用の洗口液
抗菌作用があるため、効果としては比較的高いと考えます。ただし、使用を中止すると元に戻ってしまう可能性が高いと考えます。
6 胃などからにおいを消すタイプ
消化器科ではありませんので何とも言えませんが、口臭は口腔内に原因があることが多く、また呼気は肺からくるため、個人的には効果はないと考えています。食べ物のにおいを一時的に芳香で隠すものだと考えます。
ちなみに、アメリカでは胃からくる口臭を抑制するという宣伝をすること自体がすでに禁じられているそうです。