(続)歯周内科療法はどうなんだろう?
- 2012年2月号 -
歯周内科治療というのをはじめて知ったのは、私が名古屋で勤務をしている当時ですので、もう7~8年以上前になります。
当時は、歯周病の外科的な処置であるフラップ(保険可能)やエムドゲイン(保険外)やGTR(現在は保険内)の治療技術を学んでいる頃でした。
これらは実は結構難易度が高く四苦八苦している頃で、「薬で歯周病が治る」そんないい方法があるならぜひ知りたい!と、製薬会社が主催する歯周内科療法のセミナーに参加しました。
理論的には、歯周病も菌が関与して起こるため、感染症としてとらえるその考え方は正しいと感じました。ただその研修では、歯石除去についてあまり触れず、まるで薬のみで改善しているように感じ違和感を覚えた記憶があります。
抗菌薬としてジスロマックの効果は実感していましたので、それらは単にジスロマックからくる効果で口腔内の歯周病菌を抑えているだけでは?と疑問を抱いた記憶があります。
また、他の勤務先で位相差顕微鏡を用いて口腔内の状態を説明する事も行っていました。
ここでは、菌の構成により、歯周病のリスクを段階的に分け、患者さんに説明を行っていました。抗菌薬や抗真菌薬を用いず、通常の歯周病の診療で、菌の組成がどれほど変化するかを患者さんに説明するものとして利用していました。
多くの患者さんは、正常な菌を見ても、自分の口腔内にこんなのがたくさんいるなんて!と驚くため、「口の中にはどなたでも菌が存在します。○○さんの口腔内は、特に問題となるような菌は見当たりませんので今のところ十分改善したと考えられます」と説明しても、画像の衝撃が患者さんにとって大きく、問題ない方でもひどくショックを受けていた患者さんを覚えています。
それがあったため、以前にも書きましたが、当院では開業時に位相差顕微鏡を入れませんでした。しっかり説明できる環境が整わないと、患者さんを脅す道具にしかなりえない可能性があったためです。
ただ、繰り返しになりますが、歯周病を感染症の一種としてとらえる考え方には賛同できますし、もっと研究が進められていけばと願っています。
歯科分野では、様々な治療法があみだされ、衰退していくため、十分な研究結果等がない方法には注意が必要だと考えますし、誇大広告のような記載、突っ込みどころが満載な記載は、たとえそれが有効な治療であったとしても逆に歯科医師からすると不信感を抱かせるだけになってしまうかもしれません。
しっかりした研究結果や理論が確立し、歯周病の方に
「では、この薬を飲んで、これで歯を磨いて下さい。」
これで歯周病の治療が終わるようになると、お互いに非常に楽でいいですね。