歯周内科治療はどうなんだろう?
- 2012年1月号 -
歯周病の治療法の一つとして歯周内科治療というのがあります。
要は、歯周病を風邪などと同様の感染症ととらえ、位相差顕微鏡で口腔内の細菌を観察した後、抗菌薬(ジスロマック)の服用と抗真菌薬入りの歯磨き粉でブラッシングを行う方法です。
なぜ、この話をするかというと、研修に参加した時にたまたま隣に座られた先生が「先生、雑誌に歯周内科治療についてのっていたんだけど、やった事ある?どうなんですかね?」と質問を受けたんで、雑誌を読ましてもらって意見を述べさせてもらいました。
記載されている記事には、多くの問題点がありましたので。
さて、歯周内科治療に関しては、当院では行っておりません。
理由は、後述させていただきます。
ただ、歯周病を感染症にとしてとらえ、内科的な治療を行う事自体には賛成です。
それだけでは、不十分だとは思いますが。
よって、私個人としては歯周内科治療の考え方に対して、むしろ肯定的、もしくは期待していると考えていただいて結構です。
その雑誌に以下のアンケート結果がのっていました。
これを見て、どう思いますか?
「歯周内科をはじめて1週間後の自覚症状の変化」
すごい。こんなに症状の改善率がいいなんて。私もやってみようと思いませんか?
しかし、この記載には大きな問題点があります。
対比した研究群の記載が一切ありません。
抗菌薬として投与したジスロマックという薬品は、歯周病に対し非常に優れた効能を持っています。歯肉の一部が壊死しているような急性の激しい歯周病でもジスロマックの投与により1週間後にはかなり改善されてきます。
つまり、歯周内科治療としての一連の療法が作用して、上記の改善結果が出たのか?
ジスロマックのみの投与の場合とどれぐらい作用に違いがあるのか?
これを比べないと、このデータにいっさいの意味がなくなってしまうのです。
そして、炎症が強い場合は、ジスロマックは保険での投薬が可能なのです。
歯周内科に関して、反対しているわけではありませんが、これがこのような形で大きく載せられると、逆にその療法自体があやしいものに感じてしまいます。
さらに、来月のTOPICに続きます。