顎関節症の治療について
- 2011年9月号 -
顎関節症というのを御存知でしょうか?
上記の症状に記憶にある方は、顎関節症の可能性があるかもしれません。
今回は、この顎関節症の治療に関して少し書かしていただきます。
顎関節症ほど、原因や治療法に関する考え方などがかわるものも実は珍しいですし、その考え方に私自身が思うことがありましたので。
一昔前、顎関節症=かみ合わせの悪さと考えられている時代がありました(一昔と言っても、十数年前の話です)
顎関節症となったら、かみ合わせを治すために矯正を行ったり、奥歯のかぶせものをことごとく変えたり、歯を削ってかみ合わせを変えたり、また、外科処置により関節の外科手術を行ったりといった方法がとられていました。
しかし、結果として、予後(治療成績)があまりよろしくないという事が徐々に言われ始め、顎関節症に関する考え方が大きく変わりました。
つまり、顎関節症は様々な要因が複雑に積み重なって生じてくる多因子性疾患と考えられるようになりました。
かみ合わせは原因ではなく、多数存在する要素の中の一つでしかないという考え方です。
つまり、原因というよりも引き起こす要素となる誘因が多数存在し、それが積み木のように積み重なり、その人の持っている総合耐久力(適応力)を超えると、症状としてあらわれてくるという考え方です。
よって、以前のように歯を削ってかみ合わせを治したり、顎関節症の治療というだけでの矯正や、多数のかみ合わせをかぶせもので作ったりという治療法はあまり行われず、逆に日常生活で注意してもらったり、それでも改善が見られなければスプリントというマウスピースのようなものを作成したりと、保存的な治療法をまず行うことに主流が移り変わってきました。
私自身も顎関節症の治療を行う中で、この方法や方針が最も功を奏すと感じています。
しかし、最近、友人が参加した講習のなかで、以下のようなことが言われていたようです。
「顎関節症は完全に精神的なものなので、治療しないことが治療」
実際、そのような論文も出てきているようです。
確かに、顎関節症において精神的な要素というのは非常に大きいものであると感じます。
だからと言って、顎関節症の方で口があかない、痛いと言って来院された方に「精神的なものだから、気にしないで」と言ってかえせるかというと、なかなか難しいものがある気がします。
もう少し、論文も多数出てきて、完全に精神的な原因となれば、こちらの治療もずいぶん楽になるのですが。
また、顎関節症も実際は多くのタイプに分かれます。その中には、精神的な要素が強いものもありますし、実際、かみ合わせや日常生活などが大きくかかわっている事を、治療されている先生は感じている事と思います。
今後、さらに様々な研究がすすみ、顎関節症に対する明確な治療法が確定する時が早く来てくれればいいなぁと思いながら、日々診療している今日この頃です。