歯科治療は回数がかかる?
- 2010年9月号 -
歯科関係者以外の知人から、よく言われることの一つとして「歯科治療はなんであんなに回数がかかるのか?」とよく問われます。
確かに、風邪をひいて内科や耳鼻科に行くと診察して薬を頂いて終了。多くても2~3回通院すれば済んでしまうのに歯科の場合治療回数がはるかに多くかかります。なぜでしょうか?
例えば風邪の場合、自己免疫により自らの力で治癒させることが可能で、あくまでもらった薬や点滴は、自己回復の手助けで、後は無理をせず休養をとり、バランスのよい食事をすることにより通常は治癒します。
しかし、例えば処置が必要な大きさの虫歯の場合、放置しておいては決して自然治癒しません。進行して悪化する一方なので歯科で治療しなければなりません。
また、銀歯をかぶせる時を思い出してください。例えば洋服のように大まかなサイズの歯をそろえて置いて、それをくっつけるということはしていません。それぞれの型をとって、技工士さんにその歯に合うように作ってもらい、それを調整するわけです。
銀歯に限らず詰めものでも、それぞれのかみ合わせに合わせてすべてがオーダーメイドなのです。オーダーメイドで洋服を作ったことがある方なら形・色を決め生地を決めたり寸歩を測ったりと、既製品の服を買うより何倍も大変なのはご理解いただけると思います。
また、歯科で回数が比較的かかる代表例として、根の先端に膿をためているもの(根尖病巣)があります。この場合、膿をためている空間は本来、骨があった部位ですので、歯の治療というより骨の治療と考えてみてください。もちろん、原因が歯にありますので歯から治療を行うわけですが、骨を溶かしているバイ菌を退治しているわけですから自然と回数がかかります。
時々、お金を目当てに回数を増やしているような感じでネットに書き込んでいる方もいらっしゃいますが、根の治療で払う金額を考えてみてください。10割負担になおしても、おそらくスッタッフの時給にもならないはずです。入れ歯の調整も多くの場合、同様です。
それでも、治療上必要ですから、歯科医師は行っているのです。
しかも虫歯以外に歯周病などがあった場合、基本的に被せる前に歯周病を安定させねばなりません。なぜなら被せるべき部分の歯肉が腫れたり出血があったりすると、きれいな型取りができず、しっかりとした物が作成できません。また、根本的な土台部分の具合が良くないのに、歯を被せても持たないからです。例えば、家を建てる時に沼地を選ぶでしょうか?土壌がしっかりした土地に家を建てたいと思いませんか?歯の治療でも同じことが言えます。
このような事情があるためどうしても歯科では治療回数が増えてしまうのです。
ですから極力少ない来院回数で治療を済ませる最もよい方法は少なくとも年に1~2回の健診を受けることだと思います。痛みが出てから病院に行くのではなく、日頃から予防を主体として、大きなトラブルを抱える前に、治療を済ませてしまうのが最も良い方法だと私は考えます。