歯科における早期発見・早期(即時)治療は正しいのか?
- 2010年10月号 -
よくあらゆる疾患において、「早期発見・早期(即時)治療」という言葉が用いられます。
しかし、歯科においては「早期発見・適時治療」という言葉が適切であると言われます。
この違いはどこにあるのでしょうか?
多くの疾患が治療が終了した場合、元の状態に戻ります。
しかし、歯科の場合、元の状態に戻ったと言えるでしょうか?
虫歯の部分を削って、「詰め物をした」「銀歯をかぶせた」これは元の状態でしょうか?
しかも、治療を行った部位は、もともとの健全な状態(虫歯になる前の状態)に比べ、実は虫歯になりやすい状態になります。詰め物にしても、かぶせものにしても私たちの目から見れば、しっかり合っているように見えても、バイ菌からすると隙間だらけかもしれません。また、時間とともに接着面がはがれ、隙間があいてくる可能性もあります。
また、初期虫歯COなどは改善される可能性もあること、表層(エナメル質)内の虫歯であるC1などを治療した場合、部位にもよりますがその何倍もの健全歯質を削らないと取り除けないものもあります。何倍もの健全歯質を削ってつめて、今度はその詰め物の淵から虫歯が広がった場合と、C1の虫歯を経過観察で見ていった場合、数年後に再度治療が必要となった時、どちらの方が大きく歯質が失われるのでしょうか?
もちろん、第二層の象牙質まで進行した場合は、処置しない限り進行を止めることは難しいので、処置が必要となります。
かかりつけ医を持ち、定期的に検診していきながら、虫歯の進行速度や大きさをみて適切な時期に処置を行うこと。これが最も適切な診断および処置ができるため、「早期発見、適時治療」という言葉が用いられるのではないでしょうか。