歯科医による診断・方針の違いはある?
- 2011年3月号 -
以前、セカンドオピニオンならぬ、サードオピニオンとして意見を求めて患者さんが来院されました。
かかりつけの歯科医院があるそうなのですが、歯の黒い部分が気になり、そこの先生に尋ねたところ、「まだ治療しなくてもよい」との判断だったそうです。
しかし、気になるので近くの他の歯科医院に行ったところ、治療の必要があるといわれ、どちらが正しいのか、見てほしいと来院されました。
問診、視診とレントゲンの結果、どちらの判断も妥当なところとお話ししました。
私自身ならば、おそらく様子を見ると診断しますが、治療してもおかしくない状態です。
またレントゲンですら、あくまで2次元のものですので、絶対ということはありません。ダイアグノデントという測定機もありますが、当て方により数値が結構異なりますし、当てられる部位はかなり限られます(ただし、良い診断機械であることは事実です)
結果とすれば、今の状態だけを見て診断した私や前医より、ずっと口腔内の状態を見てきた、かかりつけ医の方が正確な診断ができるのではないでしょうか?とお話ししました。
昔、面白い論文を読んだことがあります。
外国のある有名な研究で、多数の専門医の先生達に、同じレントゲンを見せて治療方針を尋ねたところ、「様子を見る」と答えた先生から「保存的な治療」、「外科的な治療」、「抜歯」と様々な回答が出たそうです。ただ単に、レントゲンという情報だけでそれだけ方針が分かれるわけですから、年齢・清掃状態などなど、情報が多くなればさらに分かれるはずです。
これは、患者さんからすればおかしなように感じるかもしれませんが、その先生の考え方、技術、経験、様々な状況により変わってくるはずです。
また、治療にも流行りというものが残念ながらあります。
数年前には比較的用いられていた自費の義歯のミリングデンチャ-という片側で100万以上の義歯も、コーヌスデンチャ-という高価な義歯も、インプラントの登場によりほとんど見なくなりました。
現在でも、多くの治療法が提唱され、消えていきます。
インプラントでさえ、現在は非常に有効性を認められていますが、将来的には、何かその他の治療にとって代わられる可能性もあります。
大切なことは、自分自身と考え方が、波長があう、かかりつけ医を見つけていくことのように思います。