かなり厄介な歯のヒビ
- 2016年5月号 -
以前、参加した研修のなかで歯科医同士「歯のヒビ」の厄介な症状について話し合いました。
これ、実はすごく厄介なのです。
何が厄介なのかというと、確定診断や治療法が非常に曖昧なのです。
症状も様々、レントゲンには写らない場合が多い、見て分かるものや分からないもの、銀歯などを外さないと見えないものなど、確定させられないことが多くあります。
冷たいものがしみる、甘いものを咬むと痛むという虫歯のような症状から、時々痛むや激しい痛みが続くなど多岐に及びます。
確定が曖昧ということは、同時に治療も曖昧にならざる得ないという要素があります。
一昔前は症状があるならとりあえず削ってみるか!ということもあったようですが、EBM(根拠を基礎とした治療)が言われて久しい今日、勿論、歯科医の中でも考え方や方針の違いはありますが、原因がわからない、予測がつかないのに削るというのは避けなければなりません。
削ってしまった方がわかりやすかったり、原因はわからないけど神経をとったら症状が治まったという事もあるようですが・・・。
複数の医院を回っている場合もあり、原因ははっきりしないけど、とりあえず削った、神経とった→治ったと感謝されるケースもあるようですが、医療を行う立場からすれば賛同しかねます。
しかし、この「ヒビ」に関しては、確定診断が曖昧な以上、患者の症状自体で治療を行うかどうか決まる症状主導型の処置にならざる得ないのです。
男性の奥歯、特に力仕事をされている方の場合、よく見ると無数のヒビが見つかることは多数あります。
ご年配の方の歯の表面にも無数にヒビが見えることは多数あります。
しかし、これらはすぐ治療しましょうとはなりません。
逆に、金属を外して初めてヒビが見えてくる場合もあります。
抜いてみて、歯の根のヒビを見つけることもあります(この場合はレントゲンに所見が写ることもありますが)
厄介なのは甘いものを食べた時、少し痛むけど普段は気にならないといったような症状が軽度な場合。
怪しいとは考えますが、確定できない以上、容易に削ったり銀歯を外したりできないのです。
光をあてたり、拡大したりでヒビが見えたとしても、それが原因と確定する手段が今の所、見当たらないという話で結局終わってしまいました・・・・難しい問題です。