「やれるけどやらない」と「やれないからやらない」の大きな違い
- 2016年6月号 -
後輩の歯科医師と話していた時に
「すごいっすね。自分でインプラントも矯正も歯周外科もやれるんですね」
と言われたことがあります。
「もちろん、自分の実力以上だって思う症例はできるところに紹介するよ」と返事をしましたが。
また同級生で「うちはインプラントとか自費を希望する患者はいないから、インプラントとかやらないよ」と言っていた先生もいました。
う~んと思いながら、とりあえず聞き流しました。
彼の医院の患者さんは、入れ歯がどうしても嫌な場合は他の医院へ行くしかないんだなぁと考えながら。
その時ずいぶん前に、ある先生に言われた「やれるけどやらないと、やれないからやらないには、とても大きな違いがある」と教えていただいたことを思い出しました。
10年以上前でまだインプラントの経験が少ない時に、あらゆる面で私の実力以上の症例と判断し、それができる設備・技術を持った先生に紹介した患者さんがいます。
私の中で、おそらくこのようにやるだろうと考えていた術式があったのですが、紹介先の先生は異なる手技で治療してくれました。
「なぜだろう?今度、紹介した先生に会った時に聞こう」と思っている頃、ちょうどインプラントの研修があったため、講師の先生にレントゲン等を見せながら教えてもらいました。
「たしかに、CTやレントゲンだけを見ると先生の考えている方法が一般的かもしれない。でも、紹介した先生は当然、その術式はできるよね。といことは、その先生の経験上、年齢や生活習慣などいろいろ踏まえたうえで、こっちの術式を選んだわけだよ。
やれないからやらないのと、やれるけどやらないには大きな違いがある。
だから、一般の開業医はあらゆる治療法を学んで、仮にできなくてもそれを診断できる知識と技術は身につけなければいけない。そうでなければ自己満足の治療しかできなくなる」と教わりました。
実際、紹介した先生と後日話をした時に教えてもらい、その先生の考え方やその時用いた術式の詳しい方法を教えてもらいました。
治療技術が進歩し、一つ一つの治療が突き詰めるとかなり高度になってきました。
勿論、専門医の良さ・すごさは別の話です。
ただ私たち一般開業医も少なくともある程度、症例を診れる力を身につけなければいけないと考えます。