子供の不適切な矯正治療が56%
- 2016年12月号 -
ある歯科雑誌にこのようなショッキングな数字がのっていました。
「日本臨床矯正歯科医会の調査によると、2014年の1年間に転院や再治療で来院する小児患者の約56%が前医院で不適切な治療を受けていたことがわかった。」
内容を読んでいると、適切・不適切の判断は転医を希望された医院の先生の判断による為、治療方針の違いや考え方の違いもあり、少し客観性が低いかもしれないとも感じます。
以前のTOPICSでも記載したように、小児に限らず、当院でも他院で矯正治療を受けている患者が、転医を希望して来院されることは珍しくありません。基本的には、様々な理由で前医に引き続いて診てもらった方がいいですよとお話しますが。
ただ、その前兆のようなものは多々感じていました。
専門雑誌を始め、ダイレクトメールなどで数年前から「小児の拡大や矯正は簡単です」といったような内容のセミナー・研修などが多く目につくようになりました。
個人的な解釈にはなりますが、確かに拡大矯正は成人で行う矯正とは異なり、咬合誘導の分野(つまり大きな問題を取り除くのが目的)で、個々の歯並びや咬み合わせを改善させるものではないと考えると、簡単と言えなくはないのかもしれません。
しかし、その事を経験の少ない先生や患者、保護者がどこまで把握されているか疑問が残ります。
また小児矯正・拡大矯正の多くの装置は取り外し式で患者自身がしっかり正しく使わなければ効果は発揮されません。
当然ながら、小児矯正は永久歯への生え変わりはもとより、顎の成長も関与します。
これらを総合的に考慮すると、決して簡単なものではないと考えています。(確かに、私も矯正を習い始めた時は小児の床矯正から習い始めましたが・・・)
よって、当院では基本的に小児矯正は行っておりません。成人矯正が主になります。(ただし、ムーシールドや成長が問題とならない症例はやっていますが)
幸い、近所に小児歯科専門の歯科医院もありますので、私としても専門の先生にお任せした方が安心できます。
以前も書きましたが、矯正は治療の性質上、期間がどうしても長くなり、また他の医院へ転医ということが難しいので、行う前にしっかりと相談された方が良いと思います。