よっこいしょういち
- 2022年9月号 -
子供が小さい頃、よく奥さんに言葉遣いやイントネーションを訂正されていました。
私の出身は愛知県、大学で北海道へ行き、その後、就職で新潟や名古屋などを移動し、現在、小田原に来て18年目を迎えています。
患者さんには一時的に転勤や学校で来られている方、遠方から引っ越してきた方なども多数いらっしゃいますので、診療ではできる限り標準語を話すように心がけてはいます。
例えば患者さんが「粉の薬はのっくめないです」(飲めない・飲み込めない)と言われても私はわかりますが、逆に私が義歯を入れた方に「うまくのっくめますか?」といった場合、通じない方も多くいると思うからです。
言葉自体は注意しているのですが、直らないのがイントネーション。
しかも上記したように全国を移動していたため、様々なイントネーションが私の中で混ざってしまい、どこに行っても「先生はこちらの出身ではないのですね?」とばれてしまいます。
当然、奥さんにも多々、注意されていました。
一種の訛りなので「そんなのいいじゃん」と思うのですが、子供に移ったら困る!と言われると反論できません。
そんな中、小さな娘が自分の椅子を持ち上げるときに「よっこいしょういちー」と叫んでいました。
「横井庄一」
私の年齢でもリアルタイムに知らない。
そんな私より10歳以上年下で「横井庄一」さんをリアルタイムで知っているはずもないのに立ち上がる時になぜか「よっこいしょういちー」と叫ぶ人が身近にいました。奥さんという人です。
イントネーションを突っ込まれていつも悔しい思いをしていた私は、奥さんに向かって
「お宅のお子さんが よっこいしょういちー なんて掛け声をかけていますが、だれの影響ですかねー」と突っ込んでやりました。
「・・・私は知らない」と少し目が泳ぎながら、逃げ去るように立ち去ろうとした奥さん。その時に不意に出た言葉が「よっこいしょういち」
さては、こいつ天然だな。
そう感じる瞬間でした。